— ペルソナ×ジョブの二軸で、商品価値を“刺さる言葉”に変換する —

この記事の目次

はじめに:「誰に」 × 「どんな用事で」

同じ商品でも、買う人買う“用事(Job)”が違えば、選ばれる理由は変わります。
たとえば同じ収納ボックスでも、「引越し直後で一気に片付けたい人」と「季節外の衣類を湿気から守りたい人」では、期待する成果・不安・許容価格が違う。ここを言語化しない限り
、価格やデザインで“なんとなく”戦うことになり、自社の強みが見えません。

本稿では、

  1. ペルソナ(誰)JTBD(何の用事)を分けて捉える方法、
  2. 最新の非直線なカスタマージャーニーをどう描くか、
  3. レビュー・検索・インタビュー・調査票・LLM 活用まで含めた実務手順
  4. 商品タイプ別の具体例テンプレ
  5. KPI・検証の型
    をまとめます。今日からチームで“同じ言葉”で議論できます。

用語の整理:ペルソナと JTBD は何が違う?

  • ペルソナ(Persona)
    が買うか」を示す仮想像。年齢・職業・家族構成・価値観・生活パターン・購買行動など。
    • 役割:媒体/クリエイティブ配信の当て先を決める、文体・ビジュアルのトーンを決める。
    • 陥りがち:物語過多で、なぜ買うか(用事)が抜ける。
  • JTBD(Jobs to be Done)
    何の用事で買うか」を示す。達成したい進歩失敗したくない不安の言語化。
    • 機能的ジョブ:片付けたい・肌荒れを抑えたい・時間短縮したい
    • 感情的ジョブ:安心したい・自信を持ちたい・罪悪感を避けたい
    • 社会的ジョブ:センスよく見られたい・気が利く人だと思われたい

結論ペルソナ×JTBD二軸で見る。
(媒体と文体を決める)× どんな用事(訴求と体験設計を決める)。


JTBD を掘るための3つのレンズ

ジョブ・ステートメント(型)

When(状況) I want to(やるべき用事) so that(得たい進歩/避けたいリスク).
例)「引越し直後(When)、一気に散らかりを“見える化”して分類したい(I want to)ので、週末までに生活動線を整えたい(so that)」

4つの力(Four Forces)

  • Push(現状からの押し出し):不満・困りごと
  • Pull(新ソリューションへの引力):期待・ベネフィット
  • Anxiety(新しい不安):失敗したくない点
  • Habit(現状維持):今のやり方・慣れ

コピー・画像・FAQは、Push と Pull を増幅しつつ、Anxiety と Habit を弱める設計に。

消費チェーンのジョブ

購入だけでなく、発見→比較→決済→受取→開梱→初回使用→維持→廃棄までに生じる小ジョブ。
ボトルネック(例:開梱の手間、初回設定の不安)が CVR やレビューに直結。


データで掘る:レビュー×検索×行動ログ×インタビュー

レビューを“用事”で束ねる(LLM 支援)

  • 低/中/高評価レビューを原因×症状(例:サイズ/匂い/色味/設定/配送)でクラスタ化
  • 代表フレーズを抽出(<=15字)→FAQ主画像同梱カードに反映
  • 週間で新出トピックを検知(ロット変更・季節変動・広告訴求とのズレ)

プロンプト例(LLM向け)

「次のレビュー本文を“状況/用事/期待/不安/結果”にラベル付けし、cluster,cause,symptom,quote(<=15字),suggested_fixでCSV化。推測は禁止、原文に忠実に。」

検索・モール内クエリから“用事語”を抽出

  • 「○○ 早く」「○○ サイズ」「○○ プレゼント」など副詞・目的語に注目
  • モールのサジェスト語・カテゴリ属性(作法)に商品名主画像を合わせる

インタビュー(30–45分×5–10名)

  • リクルート:最近買った/検討中/買わなかった人をバランスよく
  • 禁止:「この商品好きですか?」(好き嫌いは推測の温床)
  • 核心:できごと意思決定の瞬間を時系列で
    • 例)「最初に何に困って、何を探し始めましたか?」「決める直前、何が不安でしたか?」
  • 成果:ジョブ・ステートメントの原文4つの力マップ消費チェーンの詰まり

定量(重要度×満足度→機会度)

  • 調査票でアウトカム(達成したい結果)を出し、重要度現在の満足度(1–5)を聴取
  • 機会度(Opportunity)の一例 Opportunity = Importance + (Importance - Satisfaction) (= 2×重要度 − 満足度。値が高いほど攻め所) ※式は手法により異なる。継続して同じ式を使うことが重要。

アーティファクト(成果物)に落とし込む

JTBD カタログ(ライブラリ化)

ID, Segment(Persona), When, Job, Outcome, Anxiety, Proof(社会的証明), Channel(Hook)
J-01, 共働きママ, 学期初め, 学用品を1つにまとめたい, 朝の準備5分短縮, サイズ合わない不安, レビュー★4.5/写真, 楽天イベント

ペルソナ v2(行動変数重視)

  • 属性(年齢/家族/居住)に加え、時間制約/可処分所得/IT リテラシ/家の広さ
  • 媒体(LINE/Instagram/YouTube/モール)とトーン(丁寧/スピーディ)
  • 購買トリガー(引越し/入学/梅雨/猛暑/ボーナス/ギフトイベント)

カスタマージャーニー(非直線を前提)

  • 情報探索(SNS→ブログ→比較 LP→モール)を行ったり来たり
  • モーメント・オブ・トゥルース:初回画像の1.5秒、送料・到着日の明記、サイズ感
  • KPI:各接点の前進率(次の行動へ進んだ割合)を可視化

コピーとページに変換する“翻訳レイヤー”

見出しテンプレ(D2C)

[状況]のとき、[用事]を、[手間/時間/不安]なく。
例)「引越し1週間で“散らかりゼロ”。仕分けが3倍速になる収納。」

楽天/モールのタイトル構文(作法寄せ)

カテゴリ語|容量/サイズ|主要ベネフィット|用途|到着日/配送特徴|保証/実績
例)「収納ボックス 65L|仕分け3区画で朝5分短縮|衣替え/引越し|あす楽|防湿」

主画像の型

  • 1枚目:用途が一目でわかる(利用シーン+サイズ定規)
  • 2–3枚目Anxiety の打消し(色味比較・置き場所事例・耐荷重)
  • 4–5枚目成果の証拠(ビフォー/アフター・レビュー引用・第三者比較)

FAQ の優先順位

  • 上位の不安クラスタから先に(「届いたら大きすぎた」「色が画面と違う」など)
  • 返品/交換の明記は CVR↑に寄与。隠さない。

商品タイプ別「用事→表現」サンプル

収納ボックス(中粗利・薄軽)

  • 主ジョブ:①引越しで分類→早く生活動線を整えたい ②衣替え→湿気と虫を避けたい
  • Anxiety:サイズ・色味・強度・積み重ねの安定性
  • コピー:「“いま散らかったまま”から抜け出す3区画。週末で生活線が通る。
  • 証拠:外寸/内寸、A4/衣類の実物比較、耐荷重試験図、レビュー写真

機能性スキンケア(高粗利・説明重視)

  • 主ジョブ:マスク荒れ/季節変わりのゆらぎ→“明朝のコンディション不安”を減らす
  • Anxiety:刺激・ベタつき・相性・ニオイ
  • コピー:「“明日の肌運”を崩さない、夜30秒の保湿バリア。
  • 証拠:敏感肌パッチテスト・全成分・ユーザーの使用前後24hの水分量グラフ

ギフト菓子(中粗利・イベント波動)

  • 主ジョブ“外さない・気が利く人に見える”
  • Anxiety:熨斗・到着日・手土産にふさわしい見栄え
  • コピー:「お渡し3分前まで迷わせない。“手提げ・熨斗・到着日”込みで外さない。
  • 証拠:シーン別セット、レビューの“差し入れ成功談”、到着日カレンダー

デスクチェア(高関与・配送負担)

  • 主ジョブ:腰痛悪化を避けながら集中2時間を作る
  • Anxiety:組立の難しさ、座面の硬軟、返品の可否
  • コピー:「2時間後の腰が“平気”。座面硬度を選べる、3クリック組立。
  • 証拠:耐久テスト、返品・引取り条件の明記、身長別の最適設定表

BtoB 消耗品(低粗利・ロジ優先)

  • 主ジョブ欠品リスクゼロで購買工数を減らす
  • Anxiety:請求・納期・規格互換
  • コピー:「“欠かさない”を自動化。規格互換保証+月次一括請求。
  • 証拠:承認フロー対応、EDI/CSV、代替品リスト

LLM の使いどころ(“推測させない”運用)

  • クラスタリング:レビュー/問い合わせを JTBD ラベルに自動分類
  • 文案草稿:上記ラベルから主画像テキスト/FAQ初稿を生成(必ず人が検証)
  • 否定語生成:広告の不要クリックを避ける語を洗い出し
  • 警戒点数値は必ず原典で確認。LLM に出典 URL を付けさせるルールで。

検証の KPI:“刺さったか”を数字で見る

  • レビュー言及率:狙った用事キーワード(例:「朝の支度」「腰が楽」)がレビュー内で何%出るか
  • CVR 差:JTBD対応の主画像・タイトル・FAQ で A/B の CVR 差
  • 返品理由のクラスタ:不安の“芽”が減っているか
  • 検索→商品詳細の遷移率:用事語で流入したユーザの前進率
  • 貢献利益/件:訴求変更で広告効率が改善し許容 CPA が上がったか

30日スプリント:言語化→ページ反映→計測

Week 1|収集:レビュー100件を LLM+人手でラベル付け/検索・モール語を抽出
Week 2|設計:ジョブ・ステートメント10本/4つの力マップ/FAQ 草稿
Week 3|実装:主画像・タイトル・比較表に反映、広告の否定語10–30件
Week 4|計測:CVR・レビュー言及率・返品クラスタをダッシュボード化→次サイクルへ


テンプレート(コピペ OK)

インタビュー質問票(抜粋)

1) 直近の“困りごと”は何でしたか?(できごとベース)  
2) 何を最初に検索/相談しましたか?(語彙と場所)  
3) 比較した選択肢は?捨てた理由は?(Anxiety/Habit)  
4) 決める直前に不安だったことは?(返品/サイズ/到着日)  
5) 使ってみて良かった/微妙だった点は?(Outcomeとギャップ)

JTBD カード

[状況]:____  
[用事]:____  
[期待する成果]:____  
[不安/障壁]:____  
[確証/証拠]:____(レビュー/数値/比較)  
[反映先]:主画像#1/#2、タイトル構文、FAQ Q1/Q2、広告見出し

FAQ の優先順位表

頻度×影響度で並べ替え → 上位5つだけを1stビューに
Q1:サイズ/色味/互換  
Q2:到着日/置き配/時間指定  
Q3:返品/交換/保証  
Q4:使い方の最初の一歩  
Q5:メンテ/洗濯/補充

よくある落とし穴(避けるべきこと)

  • “好き嫌い”の議論:内輪の感想ではなく、ジョブ言及率と CVR で判断。
  • ペルソナの物語化:職業や趣味を脚色しすぎると、実装につながらない
  • 万能商品化:ジョブが増えすぎると主画像が騒がしくなり CVR↓。上位2–3ジョブに集中
  • 返品ポリシーを隠す:Anxiety を放置すると広告費が溶ける
  • LLM の推測を鵜呑み出典と原文で照合するルールを。

まとめ:“用事”に合わせて価値を再配列する

  • ペルソナ(誰)×JTBD(用事)の二軸で、コピー・主画像・FAQ・セット・広告を再設計。
  • レビュー/検索/面談/調査票/LLMを組合せ、失敗の芽(Anxiety)から直す。
  • KPI は言及率・CVR・返品クラスタ・貢献利益/件30日サイクルで回す。

“何を買うか”ではなく、“どんな進歩のために買うか”。
そこを言語化できたブランドは、価格以外の理由で選ばれるようになります。


付録:最後に—迷ったら専門家と数字で詰めましょう

本稿のフレームは汎用の型です。実際にはカテゴリ特性・原価・物流・広告単価で最適解が変わります。
最終判断は、実データの P/L とセットで。もし社内に相談相手がいなければ、私たち(※ご相談歓迎)が JTBD 調査→ページ反映→A/B 計測まで並走します。
「うちの“用事”は何か?」を、一緒に数字で解きましょう。

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